組子細工とは、釘を使わずに木材のみで幾何学模様を組みつける木工技術です。細やかな溝・ホゾ加工が施され、組み合わせた「地組(じぐみ)」の中に、「葉っぱ」と呼ばれる小さな木の部品をさまざまな形にはめ込むことで、繊細な模様に組み上げます。その仕上がりには、職人の経験と感覚が欠かせません。
組子細工の起源は、約1400年前の飛鳥時代にさかのぼります。仏教の伝来とともに、寺院建築に必要な技術が日本に伝わり、その中に組子細工の原型となる技術が含まれていたと考えられています。飛鳥時代に建立された法隆寺の金堂や五重塔の高欄(手すり)に見られる「卍崩し組子」が、その一例です。
その後、平安時代には貴族の寝殿造で、蔀(しとみ)や屏風などの建具に取り入れられました。室町時代には、武家文化を背景に書院造が発展し、やがて障子や欄間の装飾としても広く用いられるようになりました。
PHOTO:「源氏物語絵色紙帖 幻」
出典:ColBase | https://colbase.nich.go.jp/
所蔵:京都国立博物館
江戸時代に入ると、木造建築の需要がいっそう高まり、組子細工も豊かな発展を見せました。職人たちの手によって繊細な意匠が次々と考案され、その文様は200種を超えるまでに広がり、現代に伝わる組子細工の多様性を形づくることとなりました。
現代において組子細工は、伝統的な建具や障子にとどまらず、大型装飾パネル・照明器具・家具・インテリア小物など、あらゆるシーンで幅広く取り入れるようになりました。組子は、木と人が織りなしてきた日本の美意識を今に伝えると同時に、未来のデザインへと可能性を広げる工芸として、進化を続けています。